Category Archives: 裁判

海外の裁判例

最近海外の裁判例についてのご質問を受けることが多くなりました。これまでのブログ記事は下記のとおりです。

アメリカの最近の裁判例 ニュージャージー州無罪判決 オハイオ州控訴審有罪破棄判決 テネシー・ペンシルベニア・ミシガン・メリーランド・テキサス・フロリダ・ニューヨーク・ニュージャージー

スウェーデンの最高裁判決 刑事最高裁無罪判決 最高裁行政事件判決

東京も大成功!2019年SBS連続国際シンポ・セミナー

2月12日大阪14日岐阜でSBS国際セミナー・シンポジウムを開催してきましたが、16日東京での「国際シンポジウム・SBSを知っていますか」も、約120名が参加し、大成功でした。出席者の皆様、ご協力いただいた皆様、参加していただいた皆様、すべての皆様に熱く御礼申し上げます。

セミナー・シンポジウムの中で、ビデオメッセージとして流されたえん罪被害者の声は、不確実なSBS仮説に依拠して「揺さぶり」や「虐待」を認定することによる被害の深刻さ、危険性を強く訴えるものでした。

ウェイニー・スクワイア医師、アンダース・エリクソン医師の精緻な報告によって、少なくともSBS/AHT論は、十分な証拠も科学的根拠も持ち合わせない、不確実な仮説にすぎないことが明らかになりました。不十分な証拠・根拠に基づく、誤った虐待認定は、決してチャイルドファーストではありません。逆に、罪のない子ども・家族を不幸のどん底に陥れてしまいます。

虐待とえん罪のどちらも防ぐために、課題は山積です。わかること、わからないことを含めて、冷静で建設的な議論をすることが必要であることが再確認できたと思います。これからもよろしくお願い申し上げます。

 

速報・大阪高裁も無罪を維持!

大阪高裁第2刑事部(宮崎英一裁判長、杉田友宏裁判官、近道暁郎裁判官)は、2019年1月18日、長女を揺さぶるなどの暴行を加えて死亡させたとして傷害致死で起訴され、一審奈良地裁で無罪とされた父親について、一審判決を支持し、検察官の控訴を棄却しました。大阪地裁での無罪判決に続いて、SBS仮説に対する裁判所の慎重な姿勢が示されたと言えるでしょう。

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大阪地裁で再び無罪判決!

2019年1月11日、大阪地裁第9刑事部(渡部市郎裁判長、辻井由雅裁判官、渡邉真美裁判官)は、当時生後2か月の乳児に対し、身体を揺さぶるなどの方法により頭部外傷を負わせたとして、傷害罪に問われた父親(29歳)に対し、無罪判決を言い渡しました。このような無罪は、2018年11月20日の裁判員裁判無罪判決に続くものです。


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ジャーナリスト柳原三佳さんの最新記事です

SBS/AHTの問題について取材を続けておられるジャーナリストの柳原三佳さんが、11月20日の大阪地裁での無罪判決について記事を執筆されました。

是非お読み下さい。→ こちら

SBS検証プロジェクトの秋田真志・共同代表のインタビューも掲載されています。

大阪地裁、SBS事例で無罪判決!

2018年11月20日、大阪地裁第6刑事部(裁判長大寄淳、海瀬弘章裁判官、藤崎彩菜裁判官)は、SBS仮説に基づき、生後1カ月半の赤ちゃん(男の子)を揺さぶって死亡させたとして、傷害致死罪に問われた父親に対し、無罪判決を言い渡しました(裁判員裁判)。

いくつかの争点がありましたが、最大の争点は、赤ちゃんに生じていた急性硬膜下血腫及びくも膜下血腫、左右多発性眼底出血、そして脳浮腫という三徴候から、その原因が父親による「揺さぶり」と言えるかです。検察側の小児科医師は、「赤ちゃんの硬膜下血腫は同時多発的に複数の架橋静脈が切れたことによって生じたと考えられ…落下等による打撲によって受傷した可能性は考え難く、揺さぶりによって受傷した可能性が高い」と証言しました。しかし判決は、弁護側で証人に立った脳神経外科医が「左後頭部付近の打撲によっても、赤ちゃんの脳の複数の出血は説明可能である」と証言したことなどを踏まえて、赤ちゃんの「体表に明らかな打撲痕がないことを十分考慮に入れても、揺さぶり以外の、脳に回転力が加わるような何らかの方法で頭部を打撲したことにより、本件のような脳の損傷が生じた可能性を否定することはできない」としました。慎重な言い回しですが、低位落下等の事故でも生じ得ることを指摘したもので、とにかく「揺さぶり」と決めつけようとするSBS仮説に対し、警鐘を鳴らす判断と言えそうです。

ちなみに、当該小児科医は別の事件でも「揺さぶりによって同時多発的に複数の架橋静脈が切れた」という証言をしています。しかし、筆者の知る複数の脳神経外科医は、この説明を「脳神経外科医の臨床経験からみてあり得ない」と強く批判しています。

また判決は、びまん性軸索損傷についても、重要な判断を示しています。

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アメリカで相次ぐSBS仮説を見直す裁判例

すでにお伝えしたニュージャージー州の無罪判決オハイオ州控訴審の有罪判決破棄判決以外にも、アメリカでSBS仮説の見直しを迫る裁判例が相次いでいます。

2018426日、テネシー州の少年裁判所は、生後6カ月の女児に三徴候(硬膜下血腫、眼底出血、びまん性軸索損傷=DAI)が認められたという専門家の鑑定によって、若い両親(18歳以下)による虐待が疑われた事例について、児童保護当局による親子分離の申立を却下しました。この裁判では、両親側の専門家が、当局側専門家の鑑定について、びまん性軸索損傷は認められず、硬膜下血腫も血栓静脈の見間違いの可能性があるなどと指摘しました。日本でも、近時一部の小児科医らが、裁判において、脳浮腫の原因を医学的な証拠がないにもかかわらず広範な脳実質損傷があると決めつける例が多く見られます。大変参考になる裁判例です。少年裁判所は、当局側専門家の鑑定に疑問を呈するとともに、両親による養育に問題がなかったことなども指摘し、虐待について明白で説得的な証拠はないとして、児童保護当局の申立を却下したのです。

他にも多くの裁判例がでています。 Continue reading →

アメリカ オハイオ州でSBS有罪判決を破棄~医師の役割は?

2018年8月17日のニュージャージー州での無罪判決に引き続いて、アメリカ オハイオ州の控訴審裁判所が、2018年10月5日、一審の陪審有罪判決を破棄し、再審理を命じました(IN THE COURT OF APPEALS OF OHIO SIXTH APPELLATE DISTRICT SANDUSKY COUNTY/State of Ohio v. Chantal N. Thoss /Court of Appeals No. S-16-043 Trial Court No. 15 CR 57)。

オハイオの事件は、生後6カ月の赤ちゃんのベビーシッターが、オムツを替えようとしてソファに赤ちゃんを置いて、少しその場を離れたところ、赤ちゃんがソファから落下した後、急変したというものでした。日本でも同じような低位落下が問題となっている裁判が、何件も係属しています。

一審の検察側証人だった小児科医は、事件当日に「赤ちゃんの症状は揺さぶりによるもので、被告人がその犯人だ」と決めつけていました。典型的なSBS仮説による意見です。その小児科医の意見を鵜呑みにした捜査機関は、揺さぶりを否定するベビーシッターの供述を無視し、その小児科医の意見のみを根拠に、ベビーシッターを起訴したのです。

実は、その赤ちゃんの初期治療に当たった救命医たちは、虐待の証拠はないと判断していました。検察側小児科医のみが、虐待だと決めつけていたのです。しかも検察側小児科医は、赤ちゃんに古い慢性血腫があることを無視していました。頭蓋内に古い血腫があった場合には、軽微な衝撃で再出血を生じてしまうリスクが高くなることはよく知られています。

一審の陪審は、この小児科医の証言を信じて有罪とされ、ベビーシッターは禁錮8年を言い渡されてしまいました。しかし、控訴審は、小児科医が赤ちゃんの古い血腫を無視しているのは不合理であること、ベビーシッターに動機はなく、その供述が信用できること、他にベビーシッターによる虐待の痕跡が全くないことなどを重視し、陪審の証拠判断は明白な誤りであるとしたのです。日本の裁判でも参考になる判断です。

なお、判決は、弁護側の専門家証人が、赤ちゃんの症状だけから虐待を受けたと判断されたことは驚きであるとし、「医師の役割は、傷害を解釈し、情報を捜査官に与えて補助することであっても、捜査官となって犯人が誰かを特定することではない」との証言部分を詳細に引用しています。その引用の背景には、検察側小児科医の証言が、医師としての領域を明らかに超越してしまっているという判断があったものと思われます。

ちなみに、この小児科医は、別の事件で、保育施設で3歳児の転倒による大腿骨折を虐待だと決めつけた意見書を提出しました。この小児科医は、州のために虐待事案の調査に協力し、意見書を提供する契約をしていたのです。その意見書のために、保育担当者は、解雇され、起訴されてしまいました。しかし、その事件は弁護側専門家証人が、小児科医の意見書には多くの誤りがあると指摘したことから、検察が起訴を取下げたのです。現在、保育担当者は、その小児科医師を相手に損害賠償の裁判を提起しています。

捜査機関に協力する医師の役割やその意見の在り方については、様々な問題がありますが、日本でも今後真剣な検討が必要であることは間違いありません。

スウェーデン調査② 2018年2月9日スウェーデン行政最高裁判決

今回の現地調査で、2018年2月9日に、虐待の疑いをかけられたあるSBS事案に関して、スウェーデン行政最高裁判所が重要な判決を出していたことがわかりました。

この判決の趣旨は、基本的には2014年のスウェーデン最高裁判決(こちらも、翻訳をウェブでお読みいただけます。本ブログのこの記事をご参照下さい)と同趣旨です。2014年の最高裁判決は「暴力的な揺さぶり(=虐待)の診断についての科学的なエビデンスは不確実なものと判明した」として、ある刑事事件の被告人に逆転無罪を言い渡したのでした。

これに対して、2018年2月の判決は、SBSの診断に基づいて親子を分離した行政裁判所の判断に関するものでした。

行政最高裁判所は、次のように判示しました。

「SBU報告書からすれば,三徴候の存在から暴力的な揺さぶりを示す推認の科学的根拠は少ない。本件において,頸部の軟部組織の損傷など,他の証拠は存在しない。さらに,子どもの急性の症状の前にあったとされる出来事については,目撃者の証言もなければ他の状況証拠もない。本裁判所はこのような状況において, CCが暴力的な揺さぶり によって虐待されたということを,十分な確実性をもって調査できたということはできないと結論づける。
 次の問題は,頭部へのその他の暴力によって損傷が生じた可能性はあるかという点である。
 この点について,虐待の疑いはやはり三徴候の存在のみに基づくものであった。本件では,痣,軟部組織の腫脹,骨折など,頭部への暴力を示す所見は見られない。医師たちはCCの症状の原因となる暴力がどのようなものであるか,疑われる暴力と症状とがいかに関連するかについて,説明できていない。本件傷害は暴力が加えられたことを原因とするものであるとの結論は,本件で意見を述べた他の医師たちの意見からも支持されない。このような背景のもと,CCの頭部にその他の暴力が加えられたということは,本件医学的調査からは支持されないと本裁判所は判断する。
 結果的に,上述のとおり,CCが身体的な虐待を受けた蓋然性があると結論づけるために必要な証拠は,本件においては存在しない。」

 

このように、行政最高裁判所は、SBUの報告書(2016年)を引用した上で、本件で子どもが虐待を受けた蓋然性を否定したのでした。

RFFR(スウェーデンのえん罪被害者団体)の副代表であるMats Hellbergさんが元の行政最高裁判決を英訳して下さいましたので、日本語に翻訳することができました。まだ「仮訳」ではありますが、是非お読み下さい。

180915スウェーデン行政最高裁2018年2月9日判決 翻訳

Swedish Supreme Court Decision Japanese Translation 

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