Author Archives: AKITAMasashi

SBS/AHT理論は、昆虫の飛行と同じ?-SBS/AHTをめぐる不可思議な議論

溝口解説にも出てきますが、SBS/AHT仮説への批判に対する再反論として、「昆虫の飛行」が持ち出されることがよくあります。アメリカの虐待関連の出版でも何度かこの喩えを見たことがありますので(例えば溝口医師も監訳者の1人であるキャロル・ジェニー編「子どもの虐待とネグレクト」金剛出版587頁)、アメリカでの議論の受け売りなのでしょう。しかし、その出典がアメリカにせよ、日本にせよ、SBSの議論として、およそ適切な喩えとは言えません。むしろ、議論をミスリードする誤った喩えと言うべきです。どういうことか、まず溝口解説をもとに、「昆虫の飛行」論を見てみましょう。

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海外の2018年以降の裁判例一覧

これまでもお伝えしてきたように、海外ではSBS/AHTに疑問を呈する裁判例が相次いでいます。このことについて疑義を挟む意見もあるようなので、当プロジェクトで把握できた2018年以降のSBS/AHTに疑問を呈する海外裁判例20件の一覧表を作成しました。ご参照ください。

「ふたつの正義」BSフジテレビで再放送5月5日深夜(6日未明)午前3時~

以前このブログでもご紹介したSBSを扱ったドキュメンタリー「ふたつの正義~検証・揺さぶられっ子症候群~」(第27回FNSドキュメンタリー大賞受賞作)が、BSフジテレビ(衛星放送-更新前まで、誤ってフジテレビ系列と記述しておりました。お詫び申し上げます)で再放送されます。5月5日深夜、6日未明午前3時という時間帯ですが、是非ご覧ください。↓

http://www.bsfuji.tv/fns_award/pub/index.html

柳原三佳著「わたしは虐待していない」が訴える事実の重み

(ケース1)「Hくんにはどう説明するんや、もしくは、説明しーひんのか。臭いものには蓋か!」…「警察はみんな調べてる。ハッタリや思うたら大間違いや!この9か月、あんたは自分の保身ばかり考えてたんやろけど、こちらも9か月、同じ月日が流れていて捜査してるんや」

(ケース2)「Tの頭はスカスカ。一生障害児」…「Tが障害児になったのはお前のせい。お前が蹴飛ばしたんやろ、投げ飛ばしたんやろ!」

どちらも、柳原三佳さんが出された「わたしは虐待していない-検証 揺さぶられっ子症候群」(講談社)からの引用です。これらはSBS/AHT仮説に基づいて虐待を疑われた二人の母親が、柳原さんの取材に対し、警察から受けた取調べの状況を語ったものです。時代遅れの取調べのようにも思えますが、決して古い取調べではありません。ケース1は、2015年9月、ケース2は、2018年9月の取り調べの状況です。SBS仮説による医師の鑑定を信じ込んだ警察官が、自白を強要している姿が生々しく浮かび上がってきます。このような取調べの実態が明らかになるのも、柳原さんが、丁寧に当事者の声を取材し続けたからにほかなりません。生の声が持つ重みを改めて考えさせられます。そして、えん罪被害の不条理さを私たちに教えてくれます。是非、多くの人にお読みいただきたい一冊です。

ところで、この本にも何度も言及がありますが、SBS仮説に基づいて鑑定意見を述べる医師の方々にも、考え直していただきたいことがあります。

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SBSをめぐるもう一つの出版-溝口医師のSBS解説

柳原三佳さんの「私は虐待していない-検証 揺さぶられっ子症候群」をご紹介しましたが、ほぼ時を同じくして、もう一つSBSに関する一般向けの出版がなされました。溝口史剛医師訳の「SBS:乳幼児揺さぶられ症候群-法廷と医療現場で今何が起こっているのか?」(金剛出版)です。これは、アメリカのSBS理論を主導してこられたロバート・リース医師が書かれた”To Tell The Truth”という法廷小説を、溝口史剛医師が日本を舞台に置き換えた翻訳をされた上、SBSの議論状況について、溝口医師の立場からの詳細な解説を加えたものです。溝口医師による解説部分は、「訳者まえがき」が3頁、「訳者あとがき」が、「訳者による解説」「追記」「さらに追記」という文章及び参考文献も含めて全文80頁に及んでいます(以下、「溝口解説」とします)。そして、溝口解説は、その紙幅の多くが、SBS検証プロジェクトの活動、特にホームページやこのブログに対する批判で埋め尽くされいると言っても過言ではありません。非常に丁寧にホームページやブログを確認して下さっていることが、よく判ります。通説化してしまっていたSBS仮説について、議論を巻き起こしたいと考えていた当プロジェクトとしても、多くの批判もいただきながら、議論が活性化し、建設的な話し合いができることは、まさに望むところです。

しかし、溝口解説は残念ながら、私たちの期待したような冷静で建設的な議論からはほど遠いものと言わざるを得ませんでした。

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柳原三佳さん「私は虐待していない-検証 揺さぶられっ子症候群」発売

このブログで何度かご紹介したジャーナリストの柳原三佳さんが、講談社から「私は虐待していない-検証 揺さぶられっ子症候群」を上梓されました。SBSをめぐる様々な状況を的確に指摘した意欲作です。当プロジェクトにも触れていただいています。是非、お読みください。

2019連続・国際セミナー・シンポジウム大成功!

2月12日大阪14日岐阜でSBS国際セミナー・シンポジウムを開催してきましたが、16日東京での「国際シンポジウム・SBSを知っていますか」も、約120名が参加し、大成功でした。出席者の皆様、ご協力いただいた皆様、参加していただいた皆様、すべての皆様に厚く御礼申し上げます。

セミナー・シンポジウムの中で、ビデオメッセージとして流されたえん罪被害者の声は、不確実なSBS仮説に依拠して「揺さぶり」や「虐待」を認定することによる被害の深刻さ、危険性を強く訴えるものでした。

ウェイニー・スクワイア医師、アンダース・エリクソン医師の精緻な報告によって、少なくともSBS/AHT論は、十分な証拠も科学的根拠も持ち合わせない、不確実な仮説にすぎないことが明らかになりました。不十分な証拠・根拠に基づく、誤った虐待認定は、決してチャイルドファーストではありません。逆に、罪のない子ども・家族を不幸のどん底に陥れてしまいます。

虐待とえん罪のどちらも防ぐために、課題は山積です。わかること、わからないことを含めて、冷静で建設的な議論をすることが必要であることが再確認できたと思います。これからもよろしくお願い申し上げます。

 

AHT共同声明の問題点(4)-区別する基準が存在しない

(1)循環論法、(2)確率の誤謬、(3)自白への依存AHT共同声明の問題点を指摘してきました。4つめの問題として、虐待とそれ以外を区別する基準が存在しないという問題点を取り上げましょう。この点については、すでに「なぜ議論はすれ違うのか-わからないことは、わからない」の中でも取り上げています。しかし、重要な問題なので、繰り返し取り上げたいと思います。

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AHT共同声明の問題点(その3)-自白への依存

SBS仮説をめぐる大きな論点の一つが、「揺さぶりのみによってSBSとされるような頭蓋内損傷(三徴候)が生じるか」です。仮に揺さぶりのみで三徴候が生じるとしても、逆に三徴候がある場合に揺さぶりと言えないことは当たり前です。今回の国際セミナー・シンポウェィニー・スクワイア医師は、「インフルエンザで頭痛は生じる。しかし、頭痛があるからと言って、インフルエンザとは言えない」という例を挙げておられましたが、本当にそのとおりです。ただ、ここではその議論はひとまずおきましょう。「揺さぶりのみで三徴候が生じる」というSBS仮説の大前提そのものが揺らいでいるのです。その大前提は、自白に依存しているからです。

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AHT共同声明の問題点(その2)-チャドウィックの確率の誤謬

AHT共同声明」には、循環論法(循環論法の問題点はこちら)以外にも様々な問題点があります。例えば、「共同声明」には、「例えば、チャドウィックらは、低位落下の研究の中で低位落下による死亡は5歳以下の子どもにおいて年間100万人あたり0.48人であると言及した」という表現がでてきます。これはすでにこのブログでも詳しく説明した「確率論の誤謬」です。ところが、「共同声明」では、そのような誤謬も前提の中に隠されてしまい、一読しただけでは判らないのです。同じような議論は日本の論者にも見られます。

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