最近の判決についての報道が増えるに伴い、SBS仮説に苦しめられている方からの連絡をいただく機会も増えました。
その際、SBS検証プロジェクトの事務局が大阪にあることから、関西以外にお住まいの方が相談を躊躇されることもあると伺いました。SBS検証プロジェクトは各地の弁護士と連絡を取りつつ、全国の相談を受け付けています。その旨をプロジェクトのHPにも追記しましたので、お気兼ねなくご相談下さい。
お問い合わせフォームはこちら→ SBS検証プロジェクト
最近の判決についての報道が増えるに伴い、SBS仮説に苦しめられている方からの連絡をいただく機会も増えました。
その際、SBS検証プロジェクトの事務局が大阪にあることから、関西以外にお住まいの方が相談を躊躇されることもあると伺いました。SBS検証プロジェクトは各地の弁護士と連絡を取りつつ、全国の相談を受け付けています。その旨をプロジェクトのHPにも追記しましたので、お気兼ねなくご相談下さい。
お問い合わせフォームはこちら→ SBS検証プロジェクト
連日の無罪判決で、SBS問題に関する社会の関心が高まっていることを実感しています。SBS検証プロジェクトにも「自分の家族が虐待を疑われてしまった」「以前に同じ体験をしたことがある」というご連絡を頂戴しています。
メディアでも注目が高まっています。
毎日新聞は、「論点『SBS=虐待』なのか」(2020年1月29日)で「虐待事件を減らす一方、冤罪(えんざい)被害者も生まないためにはどうすればいいのか」について、3人の専門家の見解がまとめられていました。SBS検証プロジェクトの笹倉共同代表は「児童虐待を巡る冤罪は本人だけでなく、子供にも取り返しのつかない傷を残す。SBS理論の是非については海外で展開されている懐疑論も踏まえつつ、中立的で科学的な立場から検証を進めるべきだ」と話しています。
SBS問題をかねてから取材してきた、関西テレビの上田大輔記者も、一連の無罪判決を受けて詳細な解説記事を書いています。
最新の記事はこちら → 「【特集】驚異の無罪率…“揺さぶり虐待“裁判の法廷で、「虐待ありき」のSBS捜査に2つの「逆転無罪」が“苦言“」
上田記者は、大阪高裁の2つの無罪判決が、いずれも「虐待ありき」の姿勢に基づく診断に依拠してきた捜査機関とそれを追認してきた裁判所に対して警鐘を鳴らしていると指摘しています。
ひとつ前に英語でポストしましたが、日本の一連の裁判は、海外においても注目を集めています。
There has been much development in shaken baby syndrome (SBS) / abusive head trauma (AHT) cases in Japan this year so far.
On January 28, the Osaka High Court affirmed a not- guilty verdict in a case of a father alledged to have abused his girlfriend’s daughter, causing head trauma.
On February 6, the Osaka High Court reversed and found not-guilty in a case of a mother, who was sentenced to 3 years in prison (sentence suspended for five years) in Osaka District Court in 2018. The Osaka High Court stated that the defence witnesses’s (neurosurgeons)
testimonies were more reliable than the pediatrician’s who testified for the prosecution.
Then on February 7, the Tachikawa Branch of the Tokyo District Court handed down a not-guilty verdict in a case of a father indicted of shaking his daughter to death. You can read about the decision here (in English).
These decisions have all pointed out that just because there is the “triad” or other symptoms, you cannot simply conclude that the baby was actually abused: there needs to be a thorough review of cases.
There many more cases still pending. We hope that there wil be a more scientific and rational decision on SBS/AHT in Japan in the future.
また、今度は東京地裁立川支部で、SBS仮説に基づき赤ちゃんを揺さぶって死亡させたとして、父親が起訴された事件で無罪判決が出ました(傷害致死・裁判員裁判。求刑8年)。この事件では多くの医師が証人として証言したようです。裁判所は、これら医師の証言を慎重に検討した上で、「本件のように犯罪を証明するための直接的な証拠がなく,高度に専門的な立証を求められる傷害致死事件においては,生じた傷害結果について医学的な説明が可能かということだけではなく,本件に即していえば,被害者の年齢,事件前の被告人の暴行の有無やその態様,事件に至る事実経過,動機の有無やその合理性,事件後の被告人の言動などの諸事情を総合的に検討し,常識に照らして,被告人が犯行に及んだことが間違いないと認められるかを判断する必要がある。…本件の事実経過からは,被告人が被害児に揺さぶる暴行を加えたことをうかがわせる事情は見当たらず,被害児に暴行を加えていないと一貫して主張する被告人の供述には一応の根拠が認められることや,被害児に生じた本件各傷害の発生機序に関する検討結果を併せてみれば,結局,被告人が被害児に揺さぶる暴行を加え,その結果,本件各傷害を負ったと認めるには合理的な疑いが残ると言わざるを得ない」と判断しました。SBS仮説に依拠して、医学的な所見のみで、揺さぶりと決めつけようとしてきたこれまでの訴追・立証の在り方に、強い警鐘を鳴らしたと言えるでしょう。それにしても、99.9%有罪と言われてきた日本において、これだけ無罪判決が続くことは、異常というほかありません。これまで日本の検察庁は、起訴は立証が間違いない事件のみを慎重に行ってきたと述べて来たはずですが、そのような思い込みを捨てなければなりません。すでに関係機関は、SBS仮説をゼロから見直すことを義務付けられていることが明らかです。
昨日の判決について報道が相次いでいます。その中で、SBSの問題についてSBS検証プロジェクトの設立当初から取材を続けてきた、関西テレビの報道をご紹介しましょう。
関西テレビは本件の一審の状況も振り返りつつ報道しました。
「冤罪を訴える弁護士」と、「虐待防止に取り組む小児科医」が法廷で激しく衝突。この裁判をきっかけに、揺さぶりの医学的根拠を問い直す「SBS論争」が巻き起こりました。
そして、次のように指摘します。
虐待事件の裁判で有罪判決の根拠となってきたSBS診断の正当性が揺らいでいます。……相次ぐ「逆転無罪」判決により、虐待かそれとも事故・病気かの鑑別が乳児虐待捜査で適切に行われているのか、大きな疑問が生まれています。今回の判決を言い渡した西田裁判長は、刑事裁判においては「医師の見解に対する厳密な審査」が必要だということをあえて強調しました。「虐待ありき」のSBS診断にそのまま依拠してきた捜査機関、裁判所に反省を迫った判決といえそうです。
SBS冤罪は、どなたの身にも降りかかりうる問題です。このような報道をきっかけに、この問題について社会がさらに認識を深めていくことを願います。
揺さぶりを疑われた母親に逆転無罪判決を言い渡した大阪高裁令和2年2月6日判決(第5刑事部 西田眞基裁判長、五十嵐常之裁判官、伊藤寛樹裁判官)は、検察側証人であった溝口史剛医師の証言の問題点を鋭く指摘しました(同医師は、山内事件でも検察側証人でしたがその逆転無罪判決でも厳しく批判されています)。SBS事件における医師証言の信用性判断の在り方について、重要な指摘と思われますので、少し詳しく述べてみたいと思います。
こちらも注目→2月14日、日弁連(霞ヶ関・弁護士会館)のセミナー
2020年2月6日、大阪高裁は山内事件に引き続き、生後1か月半の赤ちゃんを揺さぶって重篤な傷害を負わせたとして、一審で有罪判決を受けた母親に対し、逆転無罪判決(第5刑事部 西田眞基裁判長、五十嵐常之裁判官、伊藤寛樹裁判官)を言い渡しました。低位落下によっても、SBSとされるような症状が出るかどうかが争われた事件であり、非常に重要な意義がある判決と言えます。ちなみに、検察側の医師証人は、このブログでも再三触れ、山内事件でも証人だった溝口史剛医師です。控訴審判決では、溝口証言の信用性が明確に否定されました。詳細は、追ってご報告します。
こちらも注目! 日弁連で2月14日にセミナー
報告会の模様をまとめたレポートが共催の龍谷大学HPにて公開されました。
「無実の祖母はなぜ『犯人』にされたのか ―SBS冤罪・山内事件を振り返る―」を共催【犯罪学研究センター】
弁護団報告の詳細をお読みいただけます。ぜひご覧ください。
2020年1月28日、大阪高裁刑事3部(岩倉広修裁判長)が、一審大阪地裁の無罪判決 (傷害致死・裁判員裁判)を支持し、検察官の控訴を棄却しました。
亡くなった事件当時1歳11か月の児童には、揺さぶり・虐待を認定する根拠とされる、いわゆる三徴候(急性硬膜下血腫、眼底出血、脳腫脹)が生じていました。裁判では、そのうち主に急性硬膜下血腫の頭部外傷の原因が、 被告人の暴行によるものと断定できるのか、あるいは事故等の他の可能性があるかということが争点となりました。
一審(大阪地裁平成30年3月14日判決)は、児童に見られた急性硬膜下血腫の原因となる架橋静脈の破綻は、「故意による打撃のほか、転倒等の事故も考えられる」との弁護側医師の証言から、「死亡結果が生じる程度の急性硬膜下血腫が偶発的事故により発生する可能性も十分にある」として、無罪を言い渡していました。今回の控訴審判決もその判断を是認したものです。
内因性で逆転無罪判決を言い渡した大阪高裁令和元年10月25日判決に引き続き、低位落下・転倒による急性硬膜下血腫発症の可能性を正面から認めた点で、重要な判断です。SBS/AHT仮説は、低位落下・転倒では、三徴候が生じないということを前提としていますが、その前提を明確に否定しました。さらに、医学的所見から暴力的な揺さぶり=虐待と認定できるとするSBS/AHT仮説による訴追そのものに、大きな疑問を投げかけ、再考を促すものと言えるでしょう。
これまでもこのブログでご紹介してきた藤原一枝医師が、幻冬舎から「さらわれた赤ちゃん-児童虐待冤罪被害者たちが再び我が子を抱けるまで-」を出版されました。西本博医師と共著の「赤ちゃんが頭を打ったどうしよう」に引き続き、児童相談所による親子分離の実際を、具体例で紹介されています(SBS検証プロジェクトについても触れられています)。生の事実と、脳神経外科医としての知見に裏打ちされた論述には、強い説得力があります。親子分離については、「虐待の疑いがある以上、オーバートリアージはやむを得ない」という意見が根強いと思われます。しかし、親子分離の実際を前にして、本当にそれで良いのか、一石を投じる書物です。是非ご一読ください。