Category Archives: 裁判

昨日の逆転無罪判決の報道

 昨日の判決について報道が相次いでいます。その中で、SBSの問題についてSBS検証プロジェクトの設立当初から取材を続けてきた、関西テレビの報道をご紹介しましょう。

 関西テレビは本件の一審の状況も振り返りつつ報道しました。

「冤罪を訴える弁護士」と、「虐待防止に取り組む小児科医」が法廷で激しく衝突。この裁判をきっかけに、揺さぶりの医学的根拠を問い直す「SBS論争」が巻き起こりました。

 そして、次のように指摘します。

虐待事件の裁判で有罪判決の根拠となってきたSBS診断の正当性が揺らいでいます。……相次ぐ「逆転無罪」判決により、虐待かそれとも事故・病気かの鑑別が乳児虐待捜査で適切に行われているのか、大きな疑問が生まれています。今回の判決を言い渡した西田裁判長は、刑事裁判においては「医師の見解に対する厳密な審査」が必要だということをあえて強調しました。「虐待ありき」のSBS診断にそのまま依拠してきた捜査機関、裁判所に反省を迫った判決といえそうです。

 SBS冤罪は、どなたの身にも降りかかりうる問題です。このような報道をきっかけに、この問題について社会がさらに認識を深めていくことを願います。

逆転無罪のポイント・溝口史剛医師の供述変遷

揺さぶりを疑われた母親に逆転無罪判決を言い渡した大阪高裁令和2年2月6日判決(第5刑事部 西田眞基裁判長、五十嵐常之裁判官、伊藤寛樹裁判官)は、検察側証人であった溝口史剛医師の証言の問題点を鋭く指摘しました(同医師は、山内事件でも検察側証人でしたがその逆転無罪判決でも厳しく批判されています)。SBS事件における医師証言の信用性判断の在り方について、重要な指摘と思われますので、少し詳しく述べてみたいと思います。

こちらも注目→2月14日、日弁連(霞ヶ関・弁護士会館)のセミナー

      医療判例解説に朴永銖医師による本事件の解説が掲載されました。

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【速報】大阪高裁で再び逆転無罪判決!

 2020年2月6日、大阪高裁は山内事件に引き続き、生後1か月半の赤ちゃんを揺さぶって重篤な傷害を負わせたとして、一審で有罪判決を受けた母親に対し、逆転無罪判決(第5刑事部 西田眞基裁判長、五十嵐常之裁判官、伊藤寛樹裁判官)を言い渡しました。低位落下によっても、SBSとされるような症状が出るかどうかが争われた事件であり、非常に重要な意義がある判決と言えます。ちなみに、検察側の医師証人は、このブログでも再三触れ、山内事件でも証人だった溝口史剛医師です。控訴審判決では、溝口証言の信用性が明確に否定されました。詳細は、追ってご報告します。

こちらも注目! 日弁連で2月14日にセミナー

【速報】大阪高裁、一審無罪判決を維持!

2020年1月28日、大阪高裁刑事3部(岩倉広修裁判長)が、一審大阪地裁の無罪判決 (傷害致死・裁判員裁判)を支持し、検察官の控訴を棄却しました。

亡くなった事件当時1歳11か月の児童には、揺さぶり・虐待を認定する根拠とされる、いわゆる三徴候(急性硬膜下血腫、眼底出血、脳腫脹)が生じていました。裁判では、そのうち主に急性硬膜下血腫の頭部外傷の原因が、 被告人の暴行によるものと断定できるのか、あるいは事故等の他の可能性があるかということが争点となりました。

一審(大阪地裁平成30年3月14日判決)は、児童に見られた急性硬膜下血腫の原因となる架橋静脈の破綻は、「故意による打撃のほか、転倒等の事故も考えられる」との弁護側医師の証言から、「死亡結果が生じる程度の急性硬膜下血腫が偶発的事故により発生する可能性も十分にある」として、無罪を言い渡していました。今回の控訴審判決もその判断を是認したものです。

内因性で逆転無罪判決を言い渡した大阪高裁令和元年10月25日判決に引き続き、低位落下・転倒による急性硬膜下血腫発症の可能性を正面から認めた点で、重要な判断です。SBS/AHT仮説は、低位落下・転倒では、三徴候が生じないということを前提としていますが、その前提を明確に否定しました。さらに、医学的所見から暴力的な揺さぶり=虐待と認定できるとするSBS/AHT仮説による訴追そのものに、大きな疑問を投げかけ、再考を促すものと言えるでしょう。

SBSをめぐるYAHOO!JAPANニュース新着記事

YAHOO!JAPANニュースで

“虐待冤罪” 無罪判決続く 当事者が投げ掛ける「揺さぶられ症候群」の隙間

が公開されました。ジャーリストの益田美樹さんが、SBSをめぐる日本の現状を多角的な視点からリポートしたものです。是非お読み下さい。

2月14日(金)日弁連でSBSをめぐるセミナー

来る2020年2月14日(金)午後6時から、東京霞ヶ関の弁護士会館で、SBS(揺さぶられっ子症候群)仮説をめぐるセミナー「虐待を防ぎ冤罪も防ぐために、いま知るべきこと」 (主催 日本弁護士連合会、共催 関東弁護士会連合会、東京三弁護士会、大阪弁護士会、甲南学園平生記念人文・社会科学研究奨励助成研究「児童虐待事件における冤罪防止のための総合的研究グループ」、龍谷大学犯罪学研究センター科学鑑定ユニット) を開催します。最新の状況を踏まえて、活発かつ建設的な議論をしたいと思っています。ぜひお越しください。

【大阪高裁無罪判決】報告会大成功

月曜の夜にも関わらず、約100名の参加がありました。お集まり下さった方々、またご協力下さった方々、ありがとうございました。

弁護団報告と山内泰子さんのインタビュービデオを中心に、内容の濃い2時間となりました。終了後には、有意義なご意見をいただくこともできました。寄せられたご感想やご意見をプロジェクト内で共有した上で、本判決だけでなく類似のケースに共通する多様な問題に、今後どう取り組むべきかを考えていきたいと思います。

2月の国際シンポジウムを皮切りに、SBS仮説をめぐる様々な動きのあった一年でした。この間、多くの方々のご理解とご支援を賜りましたことに、心よりお礼申し上げます。皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

*報告会の様子は、ビデオ等で一部を公開する予定です。

【大阪高裁無罪判決】報告会のお知らせ

山内さんの事件を弁護団とともに振り返ることで、本件におけるえん罪の原因を明らかにし、社会に警鐘を鳴らします。(無罪判決の速報解説はこちら。全文はこちら)。

参加のお申込みは不要、参加費は無料です。

児童虐待事案に関わる皆様、法曹関係者の皆様、司法の問題に関心のあるすべての皆様、子育てに関わるすべての皆様、是非お越し下さい!多くの方々のご参加をお待ちしております。

取材のお申込みは、上記お問い合わせ先宛にお願い致します。