Author Archives: Kana Sasakura

関テレ「裁かれる正義」がNYフェスティバル2021の2部門ファイナリストに!

2019年11月に放映された関西テレビ制作「ザ・ドキュメント 裁かれる正義 検証・揺さぶられっ子症候群」(英語タイトル: Justice on Trial: Reexamining Shaken Baby Syndrome)が「ニューヨークフェスティバル2021」において、2部門でファイナリストに選ばれました

*ニューヨークフェスティバルについては、こちらをクリック

2019年10月25日に大阪高裁で逆転無罪判決を言い渡された女性とその家族、女性の事件に関わった医師や法律家を追いながら、SBSについて検証を行った作品です。

同作品はこれまで、第70回文化庁芸術祭 テレビ・ドキュメンタリー部門優秀賞、第27回坂田記念ジャーナリズム賞、第40回「地方の時代」映像祭2020放送局部門選奨、第9回日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞を受賞し、SBSに関わる関西テレビの報道は、民放連、ギャラクシー賞なども受賞しています。

朝日新聞「揺さぶり相次ぐ無罪・処罰と乳幼児の安全区別し判断を」へのコメント

 12月21日付の朝日新聞朝刊に、大久保真紀編集委員によるSBS/AHT事件に関する「記者解説・揺さぶり相次ぐ無罪」(以下、本件記事といいます)が掲載されました。SBS検証プロジェクト共同代表の秋田・笹倉のコメントも掲載されていますが、本記事には全体として重大な問題があると考えています。

 以下、その問題点のうち、いくつかを指摘します。

1.無罪判決の原因は?

 本件記事は、SBS/AHT事件で無罪判決が相次いでいる根本的な理由について分析を加えていません。

 「病気やソファから落ちたことによって頭部の出血などが起きた可能性があると弁護側が主張、裁判所がそれを認める形で無罪判決が相次いでいる」という事実を指摘した上で、「大阪高検検事」の論文を引用し、「裁判員裁判で医療記録や解剖記録、あざの写真などの重要な客観証拠が、裁判員には理解しがたいまたは刺激が強いとして採用されないこと」を無罪判決多発の原因として挙げるにとどまっています。「大阪高検検事」の論文は、あたかも「重要な証拠が採用されなかったから無罪になったのだ」と主張するかのようです。

 しかし、これまでの無罪判決では子どもの症状に低位からの落下や静脈洞血栓症など、他の原因があった可能性が高いことが明確に指摘されています。そもそも、裁判員裁判以外による無罪判断の方が多いのです。これらの事実にもかかわらず、「大阪高検検事」の論文の当該部分を引用することはミスリーディングです。

 それどころか、本件記事は、これまでの無罪判決で指摘されてきたSBS理論自体の問題点や検察側証人の証言の問題点などについて一切指摘しません。これらの諸点に関する指摘や分析なくして、SBS/AHT事件で多発している冤罪原因を検証し「過ちに学ぶ」ことなどできるのか疑問です。事実を重視しなければならない「中立的」なメディアとしては、これまでの無罪判決の理由をもっと深く掘り下げるべきだったのではないでしょうか。

 大久保記者には上記の諸点を今後分析していただき、すでに過去に有罪判決が言い渡されていた事案についても問題がなかったかを検証していただきたいと思います。これこそが、児童虐待問題をいっかんして取材してこられた記者としての責任ではないでしょうか。


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大阪地裁で無罪判決

またSBS事件で無罪判決が言い渡されました。

大阪地方裁判所は、生後4ヶ月の長男を揺さぶって怪我をさせたとされた女性の事件について、2020年12月4日に無罪を言い渡しました。

男児は急変当時、託児所に預けられていました。その後、急性硬膜下血腫や眼底出血が発見されたことから、母親が男児を揺さぶって虐待したとされたのです。育児ストレスが動機であると主張されました。

これに対して弁護人は、男児の頭蓋内に古い硬膜下血腫が広範囲に存在しており、軽微な外力でもそこから出血した可能性があると主張しました。母親が男児を託児所に預けに行くときに抱っこひもで抱えて自転車に乗ったときに揺れた可能性があることも指摘されました。

裁判所は、女性に「暴行があったと認めるには合理的疑いが残る」として無罪を言い渡しました。

女性は、虐待と診断した医師の意見にもとづいて起訴されました。事件から三年半が経過し、ようやく無罪判決が言い渡されましたが、女性はいまだに長男と一緒に暮らすことができていません。

本件につき、関西テレビの記事を是非お読み下さい。

岐阜地裁で無罪判決

本日(2020年9月25日)、岐阜地方裁判所は生後3か月の長男を揺さぶって傷害したとして起訴された女性の事件につき、無罪判決を言い渡しました。

本件についてはすでに多くの報道があります。判決は、女性が暴行を加えていないこと、長男の傷害はソファからの落下によって生じた可能性があると判断しました。

本件でもSBS理論に依存した起訴・立証が行われました。SBS理論の問題点を直視し、中立的・科学的な立場からゼロベースで公的な検証を行う必要があることが再び明らかになりました。

朝日新聞に無罪判決を受けた女性のコメント全文が掲載されています。私たちは女性の声を真摯に受け止め、問題の本質に向き合うべきではないでしょうか。

本日の朝日新聞記事

本日の朝日新聞朝刊に、「無罪判決相次ぐ『揺さぶられ症候群』初の実態調査へ」(1面)、「『揺さぶり』難しい事実証明 多角的な検証体制求める声」(3面、いずれもリンク先は会員限定記事です)という2つの記事が掲載されました。

厚労省の『手引き』改訂に向けた動きが進んでいること、SBSの対応の見直しと、その前提となる実態調査が今後行われる予定であることが紹介されています。本記事は、虐待を疑われ1年7か月に渡って子どもと引き離され、自身も逮捕されてしまった女性の経験についても取りあげています。

家庭内で子どもが怪我をしたときには事実の証明が難しいことから、多角的な検証体制が必要です。記事では、医学的論争を整理し対応を議論しなければならないという虐待対応現場の声とともに、三徴候による判断は誤る可能性があるという研究が多くあるので慎重に判断しなければならない、小児科医や脳神経外科医などの異なる専門領域の医師が意見を交わして検証する体制が必要である、との法医学者の意見が紹介されています(ただし、法医学者のコメントはデジタル版のみに掲載)。

1週間前の同紙の別の記事「赤ちゃん、泣きやまない時」については、本ブログでも2回にわたって指摘したような様々な問題点がありましたが、本日の記事は議論や問題の状況を客観的にとらえたものでした。指摘されているとおり、冷静で多角的な議論が進められることを願っています。

朝日新聞「赤ちゃん、泣きやまない時」の問題点 その2

 すでに秋田弁護士が詳細な反論を書いていますが、2020年7月19日の朝日新聞・朝刊オピニオン面記事「(フォーラム)赤ちゃん、泣きやまない時」には、様々な疑問があります。私からも、いくつか指摘しておきたいと思います。

 第一に、SBS/AHT記事をめぐる論争の争点がどこにあるのかを、本特集記事は理解して組まれていないように思います。虐待により頭部に外傷を負う子どもがいるということには争いがありません。私たちが一貫して申し上げているのは、それを「三徴候」などで診断することに科学的根拠があるのかどうかという点、「三徴候だけでなく慎重な診断をしている」と言われますが、その診断は一体どのように行われているのか、本当に慎重な診断が行われているのか、という点です。そして「わからない」ことを「わからない」と認め、これまでの誤った診断に真摯に向き合った議論をすべきではないかということです。

 本記事は、AHTの問題について「科学的に何がいえるのか」ではなく、アンケート調査の結果などから「揺さぶりによる虐待がありうる」ことを述べるのみです。しかし、これは議論の本質を捉えたものではありません(なお、本特集記事のフォーラムアンケートには、実際に「揺さぶった」という回答はありません。また、藤原医師の研究も「揺さぶった」がどの程度のものか、揺さぶりによって三徴候等が生じたのかについても言及はありません)。

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関西テレビのSBSをめぐる検証報道がギャラクシー賞に入賞

SBS/AHTの問題を2017年から取材してきた関西テレビのSBSをめぐる一連の検証報道が、優れた放送番組に贈られるギャラクシー賞「報道活動部門」に入賞しました

選評は「揺さぶられっ子症候群(SBS)との診断による冤罪の可能性をいち早く指摘。加害者とされた側に加え、児童虐待の専門家らも取材し、冤罪と虐待をなくすという二つの正義が衝突する問題の構造を明示した優れた調査報道だ」としています。

関西テレビの2019年制作のドキュメンタリ「裁かれる正義」は坂田記念ジャーナリズム賞を、2018年制作のドキュメンタリ「二つの正義」は日本民間放送連盟(民放連)賞を受賞しています。

関西テレビのザ・ドキュメント「裁かれる正義」が坂田記念ジャーナリズム賞を受賞!

 2019年11月に放映された関西テレビのザ・ドキュメント「裁かれる正義 検証・揺さぶられっ子症候群」が坂田記念ジャーナリズム賞(第1部門 スクープ・企画報道)を受賞したそうです。

 「裁かれる正義」は、山内事件を逆転無罪判決にいたるまでの2年にわたって取材したドキュメンタリです。「検証・揺さぶられっ子症候群」の一作目である「ふたつの正義」も、2018年日本民間放送連盟賞のテレビ部門優秀賞およびFNSドキュメンタリー大賞特別賞を受賞しています。

 SBSをめぐる新たな問題を丁寧に追った取材の成果といえるでしょう。

 「ふたつの正義」「裁かれる正義」を取材した上田大輔ディレクターは、その後もこの問題について継続的に取材されています。

厚労省『子ども虐待対応の手引き』は、なぜ「揺さぶりありき」なのか

 2013年に改訂された厚生労働省の『虐待対応の手引き』は、児童相談所などの虐待対応の現場で使われている指導的で重要な文書であるとされています。

 『手引き』は「乳幼児揺さぶられ症候群(シェイクン・ベビー・シンドローム)が疑われる場合の 対応 」についても数ページを割いて説明しています。次のようにいいます。

 「SBSの診断には、①硬膜下血腫またはくも膜下出血 ②眼底出血 ③脳浮腫などの脳実質損傷の3主徴が上げられ〔る〕。……出血傾向のある疾患や一部の代謝性疾患や明らかな交通事故を除き、90cm以下からの転落や転倒で硬膜下血腫が起きることは殆どないと言われている。したがって、家庭内の転倒・転落を主訴にしたり、受傷起点不明で硬膜下血腫を負った乳幼児が受診した場合は、必ずSBSを第一に考えなければならない」(『手引き』265ページ)

 「出血傾向がない乳幼児の硬膜下血腫は3メートル以上からの転落や交通外傷でなければ起きることは非常に希である。したがって、そのような既往がなければ、まず虐待を考える必要がある。特に……乳幼児揺さぶられ症候群を意識して精査する必要がある」(同314ページ)〔下線は引用者〕

 『手引き』を読むと、硬膜下血腫等がある場合には、まず虐待を疑わなければならないという記述がなされていることが分かります。しかし、実は、『手引き』改訂の際の「原案」では、全く異なる記述がなされていたことが、関西テレビの上田大輔記者の取材によって明らかになりました。

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「AHT共同声明」の再検討(酒井邦彦元高検検事長の論文について(5))

 このブログでもすでに何度か指摘してきたとおり、2020年2月発行の『研修』誌・860号17ページに掲載された酒井邦彦「子ども虐待防止を巡る司法の試練と挑戦(1)(全3回)」は、「最近のAHTに関する内外における進展」の存在を指摘し、「どういうわけかSBS検証プロジェクトでは紹介されていない、『乳幼児の虐待による頭部外傷に関する共同声明』を紹介します」(下線は引用者)と述べた上で、この声明は「吐瀉物の誤嚥による窒息がAHTと同様の所見を呈するという主張など、SBSの反論として挙げられる多くの他の原因について、信頼できる医学的な証拠はないなどとしています」 と記述します。

 SBS検証プロジェクトは、これまでもAHT共同声明の全文を翻訳するとともに、その内容について検討(1, 2, 3, 4) してきました。2019年2月のシンポジウムではAHT共同声明について掘り下げて議論しました。したがって酒井論文の認識はそもそも誤っているのですが、本投稿ではさらに、酒井論文が重視しているAHT共同声明がどのような意図で出された文書なのかを明らかにしようと思います。

 結論からいうと、AHT共同声明は、刑事裁判に対して影響を与えるために出された、きわめて政治的な色彩の強い文書です。

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