大阪地裁、SBS事例で無罪判決!

2018年11月20日、大阪地裁第6刑事部(裁判長大寄淳、海瀬弘章裁判官、藤崎彩菜裁判官)は、SBS仮説に基づき、生後1カ月半の赤ちゃん(男の子)を揺さぶって死亡させたとして、傷害致死罪に問われた父親に対し、無罪判決を言い渡しました(裁判員裁判)。

いくつかの争点がありましたが、最大の争点は、赤ちゃんに生じていた急性硬膜下血腫及びくも膜下血腫、左右多発性眼底出血、そして脳浮腫という三徴候から、その原因が父親による「揺さぶり」と言えるかです。検察側の小児科医師は、「赤ちゃんの硬膜下血腫は同時多発的に複数の架橋静脈が切れたことによって生じたと考えられ…落下等による打撲によって受傷した可能性は考え難く、揺さぶりによって受傷した可能性が高い」と証言しました。しかし判決は、弁護側で証人に立った脳神経外科医が「左後頭部付近の打撲によっても、赤ちゃんの脳の複数の出血は説明可能である」と証言したことなどを踏まえて、赤ちゃんの「体表に明らかな打撲痕がないことを十分考慮に入れても、揺さぶり以外の、脳に回転力が加わるような何らかの方法で頭部を打撲したことにより、本件のような脳の損傷が生じた可能性を否定することはできない」としました。慎重な言い回しですが、低位落下等の事故でも生じ得ることを指摘したもので、とにかく「揺さぶり」と決めつけようとするSBS仮説に対し、警鐘を鳴らす判断と言えそうです。

ちなみに、当該小児科医は別の事件でも「揺さぶりによって同時多発的に複数の架橋静脈が切れた」という証言をしています。しかし、筆者の知る複数の脳神経外科医は、この説明を「脳神経外科医の臨床経験からみてあり得ない」と強く批判しています。

また判決は、びまん性軸索損傷についても、重要な判断を示しています。

「そもそもびまん性軸索損傷等の一次性の脳実質損傷や脳幹部損傷が存在していたことを赤ちゃんのCT画像等から判断することは困難であるものと認められる上、証人A(註:弁護側の脳神経外科医)によれば、びまん性軸索損傷等の脳実質損傷がなくてもびまん性脳浮腫が生じることはあり得る(と証言した)」ことを指摘し、本件で「びまん性軸索損傷等の一次性の脳実質損傷が存在したと直ちに推測することはでき」ないとしたのです。ここでも慎重な言い回しですが、一次性脳実質損傷=びまん性軸索損傷論を採用しなかったことは極めて重要です。なぜなら、SBS仮説に基づく虐待論を主導する小児科医らは、この「びまん性軸索損傷論」を揺さぶりの根拠として重視し、強調してきたからです。

しかし、そもそもSBS仮説における、揺さぶりでびまん性軸索損傷が生じるとの議論は、証拠がない上、医学的根拠も不十分なものでした。むしろ、揺さぶりではびまん性軸索損傷が起こり得ない、という議論も有力です。そして、三徴候の1つとされる脳浮腫は、びまん性軸索損傷ではなく、低酸素脳症が原因と考えられるという指摘も繰り返しなされてきていました。びまん性軸索損傷論によって揺さぶりだと決めつけようとする議論は、どう考えても論理に飛躍があり、不合理と言わざるを得ないのです。しかし、これまでのSBS仮説に基づく有罪判決にはびまん性軸索損傷論を鵜呑みにしたようなものもありました。その意味で、びまん性軸索損傷論に安易に依拠せず、一線を画した今回の判決は、今後大いに参考にされるべきです。

SBS仮説を主導してきたアメリカで、その見直しを求める判断が相次いでいることは、速報しました。今回の判決が、日本の裁判の流れを変えるきっかけとなることを期待します。

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