SBS仮説をめぐる大きな論点の一つが、「揺さぶりのみによってSBSとされるような頭蓋内損傷(三徴候)が生じるか」です。仮に揺さぶりのみで三徴候が生じるとしても、逆に三徴候がある場合に揺さぶりと言えないことは当たり前です。今回の国際セミナー・シンポでウェィニー・スクワイア医師は、「インフルエンザで頭痛は生じる。しかし、頭痛があるからと言って、インフルエンザとは言えない」という例を挙げておられましたが、本当にそのとおりです。ただ、ここではその議論はひとまずおきましょう。「揺さぶりのみで三徴候が生じる」というSBS仮説の大前提そのものが揺らいでいるのです。その大前提は、自白に依存しているからです。
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AHT共同声明の問題点(その2)-チャドウィック医師の確率の誤謬
「AHT共同声明」には、循環論法(循環論法の問題点はこちら)以外にも様々な問題点があります。例えば、「共同声明」には、「例えば、チャドウィックらは、低位落下の研究の中で低位落下による死亡は5歳以下の子どもにおいて年間100万人あたり0.48人であると言及した」という表現がでてきます。これはすでにこのブログでも詳しく説明した「確率論の誤謬」です。ところが、「共同声明」では、そのような誤謬も前提の中に隠されてしまい、一読しただけでは判らないのです。同じような議論は日本の論者にも見られます。
海外の裁判例
最近海外の裁判例についてのご質問を受けることが多くなりました。これまでのブログ記事は下記のとおりです。
アメリカの最近の裁判例 ニュージャージー州無罪判決 オハイオ州控訴審有罪破棄判決 テネシー・ペンシルベニア・ミシガン・メリーランド・テキサス・フロリダ・ニューヨーク・ニュージャージー
2019年SBS連続国際シンポ・セミナー・大成功!
2月12日大阪、14日岐阜でSBS国際セミナー・シンポジウムを開催してきましたが、16日東京での「国際シンポジウム・SBSを知っていますか」も、約120名が参加し、大成功でした。出席者の皆様、ご協力いただいた皆様、参加していただいた皆様、すべての皆様に厚く御礼申し上げます。
セミナー・シンポジウムの中で、ビデオメッセージとして流されたえん罪被害者の声は、不確実なSBS仮説に依拠して「揺さぶり」や「虐待」を認定することによる被害の深刻さ、危険性を強く訴えるものでした。
ウェイニー・スクワイア医師、アンダース・エリクソン医師の精緻な報告によって、少なくともSBS/AHT論は、十分な証拠も科学的根拠も持ち合わせない、不確実な仮説にすぎないことが明らかになりました。不十分な証拠・根拠に基づく、誤った虐待認定は、決してチャイルドファーストではありません。逆に、罪のない子ども・家族を不幸のどん底に陥れてしまいます。
虐待とえん罪のどちらも防ぐために、課題は山積です。わかること、わからないことを含めて、冷静で建設的な議論をすることが必要であることが再確認できたと思います。これからもよろしくお願い申し上げます。
AHT共同声明の問題点(その1)-マグワイアの循環論法
アメリカの小児科医らが公表した「AHT共同声明」には様々な問題点があります。しかし、実は「共同声明」を読んだだけでは、その問題点がわかりません。問題点の多くは、説明されていない「前提」の中に隠されてしまっているからです。最大の問題点の1つである「循環論法」について見てみましょう。
SBSがテーマのミステリー
第16回「このミステリーがすごい!」大賞・優秀賞受賞作家田村和大が、SBSをテーマにしたミステリー長編「血腫-『出向』刑事・栗秋正史」(宝島社文庫)を上梓します(2月6日発売)。SBS問題の深層に迫る意欲作です。是非ご一読ください。
最近のSBS/AHTをめぐる刑事事件での無罪・不起訴事例
最近、SBS/AHTでの無罪・不起訴が相次いでいます。SBS検証プロジェクトで把握しているだけで、以下のような事例が判っています。
2月16日(土)東京でもシンポ!
速報・大阪高裁も無罪を維持!
大阪高裁第2刑事部(宮崎英一裁判長、杉田友宏裁判官、近道暁郎裁判官)は、2019年1月18日、長女を揺さぶるなどの暴行を加えて死亡させたとして傷害致死で起訴され、一審奈良地裁で無罪とされた父親について、一審判決を支持し、検察官の控訴を棄却しました。大阪地裁での無罪判決に続いて、SBS仮説に対する裁判所の慎重な姿勢が示されたと言えるでしょう。
大阪地裁で再び無罪判決!
2019年1月11日、大阪地裁第9刑事部(渡部市郎裁判長、辻井由雅裁判官、渡邉真美裁判官)は、当時生後2か月の乳児に対し、身体を揺さぶるなどの方法により頭部外傷を負わせたとして、傷害罪に問われた父親(29歳)に対し、無罪判決を言い渡しました。このような無罪は、2018年11月20日の裁判員裁判無罪判決に続くものです。