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古川原明子 龍谷大学法学部准教授・龍谷大学犯罪学研究センター科学鑑定ユニット長

国外からも注目されるSBS検証プロジェクトの活動

相次ぐSBS無罪判決が海外でも注目を集めており、笹倉共同代表がいち早く英文でアップした判決要旨(Osaka High Court clears grandmother in a SBS case, Three More Not-Guilty Verdicts in SBS Cases!)は日本以外からのアクセス数を着実に伸ばしています。海外の専門家からは温かいメッセージが届くとともに、SBS検証プロジェクト(SRP)の活動についてインタビューの申し込みが複数ありました。そのうち、2月27日に行われたニューイングランド・イノセンス・プロジェクトとのSkypeミーティングの様子をお届けします。

アメリカマサチューセッツ州ボストンに本拠地を置くニューイングランド・イノセンス・プロジェクト(NEIP)は、冤罪の救済と予防を目的として2000年に設立されました。

ミーティングには、NEIP代表のRadha Natarajan氏のほか、Laura Carey氏、Cynthia Mousseau氏、Brandon Scheck氏が参加し、SRPからは秋田弁護士、笹倉教授の両共同代表と、古川原が参加しました。

まず、笹倉共同代表がスライドを用いながら、SBS仮説導入前後の日本での議論状況、SBS仮説が優勢な状況下でSRP設立に至った経緯、その後の活動についてプレゼンを行いました。SRPの活動は、「調査研究・啓発・支援・連携・弁護」という5つの観点から説明がなされ、設立からわずか2年強でここまで多方面に広がりを見せたことにNEIPメンバーからは称賛の声が上がりました。

プレゼン後のディスカッションでは、まず、日本には1960年代に低位落下についての知見(いわゆる中村1型)が存在していながら、なぜそれが排斥されてしまったのかという点や、地域的な事件数の偏りについて質問があり、両共同代表が日本の議論状況を補足説明しました。また、弁護側に協力してくれる専門家を見つけることや、データを収集して見直すことには、NEIPも困難を感じているとのやり取りがありました。他方、日本のSBS問題を根深いものにしている要因として、日本の刑事司法制度に特有の問題(長期の身柄拘束下での取り調べ、自白の偏重、有罪率の高さなど)を伝えると、NEIPメンバーは一様に驚いた様子でした。そのような状況下で、どのように一定の成果を上げることができたのかという質問に対し、秋田共同代表の答えは、様々な分野にむけて正確なデータをもとに根気よく働きかけを続けたことで、雰囲気を変えることが出来たからであろうというものでした。

SRPの活動にとって、海外の専門家や団体との協力は欠かせません。スウェーデンに始まった海外調査や、国際シンポジウムはその一例です。また、SBSだけでなく幅広く冤罪問題に取り組んできた国内外の人々との繋がりも大きいものでした。私たちがそうした交流の中で得てきたのは、専門的な知見や情報だけではなく、情熱と刺激です。SRPもまた、同様の困難に立ち向かう海外のファイター達にとって良い刺激となりつつあることを誇らしく感じたミーティングでした。

【お問い合わせについて】SBS検証プロジェクトHP改訂

最近の判決についての報道が増えるに伴い、SBS仮説に苦しめられている方からの連絡をいただく機会も増えました。

その際、SBS検証プロジェクトの事務局が大阪にあることから、関西以外にお住まいの方が相談を躊躇されることもあると伺いました。SBS検証プロジェクトは各地の弁護士と連絡を取りつつ、全国の相談を受け付けています。その旨をプロジェクトのHPにも追記しましたので、お気兼ねなくご相談下さい。

お問い合わせフォームはこちら→ SBS検証プロジェクト

【大阪高裁無罪判決】報告会大成功

月曜の夜にも関わらず、約100名の参加がありました。お集まり下さった方々、またご協力下さった方々、ありがとうございました。

弁護団報告と山内泰子さんのインタビュービデオを中心に、内容の濃い2時間となりました。終了後には、有意義なご意見をいただくこともできました。寄せられたご感想やご意見をプロジェクト内で共有した上で、本判決だけでなく類似のケースに共通する多様な問題に、今後どう取り組むべきかを考えていきたいと思います。

2月の国際シンポジウムを皮切りに、SBS仮説をめぐる様々な動きのあった一年でした。この間、多くの方々のご理解とご支援を賜りましたことに、心よりお礼申し上げます。皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

*報告会の様子は、ビデオ等で一部を公開する予定です。

【大阪高裁無罪判決】報告会のお知らせ

山内さんの事件を弁護団とともに振り返ることで、本件におけるえん罪の原因を明らかにし、社会に警鐘を鳴らします。(無罪判決の速報解説はこちら。全文はこちら)。

参加のお申込みは不要、参加費は無料です。

児童虐待事案に関わる皆様、法曹関係者の皆様、司法の問題に関心のあるすべての皆様、子育てに関わるすべての皆様、是非お越し下さい!多くの方々のご参加をお待ちしております。

取材のお申込みは、上記お問い合わせ先宛にお願い致します。

関テレSBS特集

2019年11月4日、カンテレ「報道ランナー」で、「乳児虐待捜査」の”恐ろしさ”…気が付けば「無実の人」が有罪に 孫への”揺さぶり”疑われた祖母に『逆転無罪』と題する特集が報道されました。配信記事をこちらからご覧いただけます(2019年11月5日現在)。

また、ドキュメンタリー「ザ・ドキュメント 裁かれる正義 検証・揺さぶられっ子症候群」が11月11日深夜1:55~2:57に放送予定です。放送エリアは近畿2府4県と徳島県と限られていますが、視聴可能な方は、ぜひご覧ください。

ディレクターを務めた上田大輔さんは、精力的にSBS問題を取材されています。SBS検証プロジェクトについても語ってくださった龍谷大学犯罪学研究センターの記事はこちら→【犯罪学研究センター/科学鑑定ユニット対談】SBS検証プロジェクト 報道記者インタビュー

大阪高裁無罪判決

無罪判決が出たと聞き、本当に嬉しく安堵しました。山内さんご自身はもちろん、いつも傍聴にいらしていた娘さん達にとって、待ち焦がれた判決だったと思います。長期に渡る理不尽な苦しみからようやく解放されたことに対して、この言葉がふさわしいのか分かりませんが、「おめでとうございます」という以外に言葉がありません。

SBS仮説は、海外ではいまやジャンクサイエンスとも呼ばれています。その仮説に基づいた検察側の主張に対して、弁護人の皆さんが力を注ぎ、精緻な弁論を展開するのを見てきたので、無罪判決が出ることを確信していました。それだけに、このケースがそもそも刑事事件になったことが不合理であったと思わざるをえません。どうしてこのようなえん罪が生まれてしまったのでしょうか。そこには、個人の問題だけではなく、構造的な問題もあるでしょう。経緯と原因を明らかにする事、それを様々な分野(法律、医療、福祉、政治)で共有する事が早急に求められると思います。

バーンズ論文の翻訳が公刊されました

パトリック・バーンズ博士の医学論文「非事故損傷と類似病態:根拠に基づく医学(エビデンス・ベースト・メディシン)時代における問題点と論争」の翻訳が、龍谷法学52巻1号にて公刊されました。翻訳者は、吉田謙一先生(大阪府監察医事務所監察医務監、東京大学医学系研究科名誉教授)です。

この論文は、医学的所見と画像診断所見のみで、虐待による損傷と、事故による損傷やよく似た病態を確実に区別することは困難であると述べたものです。結論に至る中で、画像や文献も豊富に示されており、SBS理論を検証する際には必読の論文といえます。

9月公刊の龍谷法学52巻2号には、吉田先生によるバーンズ論文の解説が掲載される予定です。いずれも、雑誌公刊から一ヶ月ほど経過後に、webでの閲覧も可能となります。

SBS検証プロジェクト共同代表インタビュー

 2018年及び2019年開催のSBS国際シンポジウムを主催した龍谷大学犯罪学研究センターのHPに、秋田・笹倉両共同代表のインタビューが掲載されました。 

「日本における揺さぶられっこ症候群問題のこれまでとこれから」    

 SBS問題に取り組む事になったきっかけを始め、これまでの歩み・今後の課題と展望が語られています。お二人の専門家としての矜持と情熱がプロジェクトを牽引し、さらに、メンバーが各々の専門性を生かして推進力となっていることが感じられる良い記事になっています。

ぜひ、お読みください。


岐阜シンポジウムも大盛況

2019年2月14日に朝日大学で開催された「揺さぶられっこ症候群(SBS)~わかっていること、わかっていないこと~」には、約120名の参加者がありました。

スクワイア講演、エリクソン講演のフルバージョンに加えて、朴先生の講演も力強く、その後のパネルディスカッションも含めて充実した5時間となりました。

ご来場くださった皆様、ご協力くださった皆様、会場を提供していただき完璧なセッティングをしてくださった朝日大学様には、厚くお礼申し上げます。

明日はいよいよSBS週間最後の国際シンポジウムです。どうぞご期待ください。