スウェーデン政府機関(医療技術評価協議会)報告書を研究すべき。

スウェーデン政府機関の医療技術評価協議会(SBU)の「SBS虐待論」についての調査は徹底しています(SBS検証プロジェクトのホームページに報告書の翻訳がでています。以下「SBU報告書」)。

http://shakenbaby-review.com/SBUReportofSBS2016.pdf

SBS虐待論では、「乳児に三徴候(硬膜下血腫、眼底出血、脳浮腫)等が見られれば、交通事故や2階などの高位からの落下といったエピソードがない限り、最後に接していた養育者が揺さぶりによる虐待を加えたと推認できる」などとされます。SBUは、このSBS虐待論について、世界的に承認されているシステマティック・レビューという検証方法を使って、2年かけてSBS虐待論を展開する全世界の3773もの医学文献を検討し、うち全文1065件について精査しました。すると、1035件は基準に合致せず、残りの30件のうち中程度の質の証拠(養育者の自白)が示されたものがわずかに2件あったのみ、他は質の低い証拠しか示されておらず、質の高い証拠があると判断されたものは1件もなかったというのです。その結果として、三徴候を揺さぶりと結びつける科学的証拠は不十分であるとしたのです。

またSBU報告書は、SBS虐待論の基準が曖昧であることや、循環論法に陥っていることを指摘します。SBS虐待論は、交通事故や2階などの高位落下でない限り、三徴候があれば先に揺さぶり=虐待が原因だと決めつけてしまいます。ではなぜ「交通事故や2階などの高位落下」が基準となるのでしょうか。そもそも「交通事故」「2階」「高位落下」というのでは曖昧ではないでしょうか。ところが、その根拠不明で曖昧な基準を前提に、たとえば養育者が「赤ちゃんがベビーベッドから落ちてしまった」と説明しても、それはウソだとか、それは原因ではない、などと決めつけてしまいます。しかし、乳児がベビーベッドから落ちた場合に、三徴候が発症しないという科学的な根拠は示されません。「低位落下では生じないものなのだ」というだけです。曖昧な基準を前提とした、結論先にありきの循環論法というほかありません。SBS虐待論は、基準が曖昧で循環論法に陥っているというSBU報告書の指摘は、もっともです。

SBS虐待論を推進してきたアメリカの虐待小児科医らは、SBU報告書に対し、SBU内の他の委員会のリーダーが影響を及ぼしたとか、虐待小児科医が委員に選任されなかったから不公正だとか、報告書公表前にチェックさせなかったのは手続的に問題があるなどといった批判を繰り返しています。肝心の内容については巧妙に議論を避け、あたかも不公正な報告書であったかのような印象操作をしているとしか思えません。

日本でも、三徴候が虐待を裏付けるとする見解は数多く示されていますが、SBU報告書についての冷静な検討がなされた様子はありません。今重要なのは、徹底した検証を行ったSBU報告書の指摘に謙虚に耳を傾けることではないでしょうか。

2 replies on “スウェーデン政府機関(医療技術評価協議会)報告書を研究すべき。”

  1. […] びまん性軸索損傷があったかどうかは、解剖した上で、顕微鏡での病理検査をしてみないとわかりません。ところが解剖していない事例でも検察側証人は、「びまん性軸索損傷だ」と証言するのです。検察側証人も、解剖して顕微鏡で見ないとわからないことは認めます。では、どうして「びまん性軸索損傷が生じた」と言えるのでしょうか。ある医師は「画像で、脳浮腫が短時間でできたことから推認しているにすぎません」と述べました。脳浮腫の原因が問われているのに、脳浮腫ができたことから推認するというのは、スウェーデンのSBU報告書が述べる循環論法そのものではないでしょうか。ちなみに、「びまん性軸索損傷」が生じた場合に、「短時間で脳浮腫ができる」という医学的根拠も示されていません。逆に、一般的には「びまん性軸索損傷」は画像上で可視化される症状はほとんどみられないとされているのです。 […]

  2. […] SBS仮説は、その根拠として揺さぶりの自白例があることを重視しています。しかし、揺さぶりの自白があるとしても、本当に自白どおりの揺さぶりがあったのか、さらには揺さぶりがあったとしても、その外傷がその揺さぶりによって生じたものと言えるのかなど、様々な問題が残されます。スウェーデン政府機関の報告書が強く指摘していますが、自白に依拠するのは危険です。この事例は、自白偏重に警鐘を鳴らすものとして極めて重要だと言えるでしょう。 […]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です