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SBS(揺さぶられっ子症候群)とは?~その1

そもそも、揺さぶられっ子症候群(乳幼児揺さぶられ症候群)とはどういうものなのでしょうか。

揺さぶられっ子症候群は、英語では”Shaken Baby Syndrome”(略して「SBS」)と呼ばれます。最近では、”Abusive Head Trauma”(「虐待による頭部外傷」、略して「AHT」)という呼び方をされることもあります。

簡単にいえば、赤ちゃんの頭を激しく揺さぶることにより、脳が損傷して重篤な結果が生じるというものです。赤ちゃんの身体に他に目立った外傷がない場合には、保護者や養育者が赤ちゃんを激しく揺さぶって(つまり、虐待して)傷害や死亡の結果を負わせたと推認されているのです。

SBSは、三つの症状(「三徴候」といいます)から診断できる、といわれています。①硬膜下血腫、②網膜出血、③脳障害(脳浮腫など)です。しかし、今後書いていく予定ですが、この三徴候の内容自体、実は明確ではありません。

SBSの理論に対しては、1980年代の終わりころから批判が向けられてきました。SBS理論の起源と現状について、これから何度かに分けて書いていこうと思います。

*詳細は、HPのこちらの記事やこちらの記事もお読み下さい!

スウェーデン政府機関(医療技術評価協議会)報告書を研究すべき。

スウェーデン政府機関の医療技術評価協議会(SBU)の「SBS虐待論」についての調査は徹底しています(SBS検証プロジェクトのホームページに報告書の翻訳がでています。以下「SBU報告書」)。

http://shakenbaby-review.com/SBUReportofSBS2016.pdf

SBS虐待論では、「乳児に三徴候(硬膜下血腫、眼底出血、脳浮腫)等が見られれば、交通事故や2階などの高位からの落下といったエピソードがない限り、最後に接していた養育者が揺さぶりによる虐待を加えたと推認できる」などとされます。SBUは、このSBS虐待論について、世界的に承認されているシステマティック・レビューという検証方法を使って、2年かけてSBS虐待論を展開する全世界の3773もの医学文献を検討し、うち全文1065件について精査しました。すると、1035件は基準に合致せず、残りの30件のうち中程度の質の証拠(養育者の自白)が示されたものがわずかに2件あったのみ、他は質の低い証拠しか示されておらず、質の高い証拠があると判断されたものは1件もなかったというのです。その結果として、三徴候を揺さぶりと結びつける科学的証拠は不十分であるとしたのです。

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