SBS/AHTについて
「揺さぶられっ子症候群」(SBS)とは
“生後3カ月の長男を揺さぶって脳などに重い障害を負わせたとして、○○県警は○日、母親の○○容疑者を傷害の疑いで逮捕した。”
皆さんも、このような新聞記事やニュース報道を、目にしたことがあると思います。
その根拠となっている「揺さぶられっ子症候群」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。英語では、Shaken Baby Syndrome、略してSBSと表記されたり、Abusive Head Trauma(虐待性頭部外傷)を略してAHTとされることもあります。子育て世代であれば、一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。要は、赤ちゃんを強く揺さぶると、脳に重い障害を与えることがあるとされる医学的な考え方です。子育て世代でなくとも、そう言われれば、そんな話を聞いたことがあるなあ、と感じた人も多いのではないでしょうか。
簡単に言うと、赤ちゃんの頭部外表に目立ったケガなどが見られないにもかかわらず、①硬膜下血腫、②網膜出血、③脳浮腫という3つの症状(これは三徴候と呼ばれます)があれば、それは「暴力的な揺さぶり」=虐待によるものだと推測して良いという理論です(ただし、論者によって、そのニュアンスや説明方法は微妙に差があります)。
確かに児童虐待は決して許されません。しかし、三徴候は、本当に「暴力的な揺さぶり」=虐待を裏付ける十分な証拠なのでしょうか。

「揺さぶられっ子症候群」の理論は揺らいでいる?

一般的によく聞かれるようになったとは言え、「揺さぶられっ子症候群」の原因を正確に説明できる人は少ないのではないでしょうか?
例えば、こんな問いを重ねてみたらどうでしょう。
赤ちゃんを揺さぶるとどうなるの?
どれくらいの強さで揺さぶるとそうなるの?
どうしてそうなるの?
どうして赤ちゃんを揺さぶるの?
「揺さぶられっ子症候群」という言葉を聞いたことがある人でも、ほとんどの人はこれらの問いに答えるのはむずかしいと思います。
実は、「揺さぶられっ子症候群」について調べれば調べるほど、これらの問いについての答は曖昧になっていきます。
「揺さぶられっ子症候群」なるものが存在するのか、仮に存在するとしても、それがどのような原因で生じるかについて、十分な医学的な根拠は示されていません。むしろ、「揺さぶられっ子症候群」と呼ばれる症状は、「暴力的な揺さぶり」とは整合しないという意見も有力に主張されています。そして、アメリカ、イギリス、カナダ、スウェーデンなど欧米先進国では、「揺さぶられっ子症候群」を虐待によるものだとすることについて、慎重になってきたと言われています。
日本ではSBS理論が無条件に信じられている?
ところが、そのように不確実とされるようになった「揺さぶられっ子症候群」の理論が、日本では多くの医師によって、医学的な真実であるかのように信じられていると聞けば、どのように感じるでしょうか?
しかも、その不確実な理論が、いつの間にか一人歩きし、虐待があったと決めつける根拠として用いられるとすればどう感じるでしょうか?
さらに日本では、そのSBS理論が誤訳され、医師によって誤った基準すら用いられているとすればどうでしょうか?
医師だけでなく、児童相談所職員、警察や検察官、さらには裁判官までもが、その不確実な理論を信じ切っているとすれば?
そのようなSBS理論により、無実の養育者が愛する子どもたちから引き離されているとしたら?
無実の養育者らが、愛する子どもたちから引き離された上に、長期の服役を余儀なくされているとすれば?
このような疑問が次々と突きつけられれば、これまで関心がなかった人も、決して心穏やかではいられないのではないでしょうか。

日本でもSBS/AHTの検証が進んでいます

私たちは、海外の知見を学びSBS理論の問題点について研究し、個別の事件でも、虐待の根拠とされる医学的根拠を徹底的に検証してきました。その結果、2018年以降、日本では13件の刑事事件で無罪判決が言い渡されています。しかし、これらの背景に、有罪判決が確定し、検証が行われていないままの事件があると思われます。日本で、多くの無実の養育者がえん罪の犠牲になってきていることが明らかなのです。 しかし、いまだに三徴候やそれ以外の「虐待に特異な症状」が根拠であるという医師の意見を前提に、養育者が刑事訴追されたり、自動相談所によって親子分離されたりするケースは後を絶ちません。 ぜひこの問題について、このウェブサイトの記事やブログをお読みいただき、知って頂ければと思います。
*SBS/AHT問題についての基礎的な事項については、「Q&A」をお読みください。